レモン色の恋【ショートストーリー】
悲しいことは一気にやってきたほうがラクだ。
何回もに分けて、少しずつ悲しむよりも一気に泣く方がいい。
その日の帰り。
本物のつばさ君の字を見た。
ホワイトボードに
「良いお年を!!!」
と書いているつばさ君の隣にはさっきの女のコーチがいた。
その字は、丸字でもなく…
かわいくもなく、乱暴で男らしい字。
でもどこかで見たことのあるような親しみを感じる字だった。
つばさ君。
名札の文字は、彼女に書いてもらったんですか?
名札ぐらい自分で書かなきゃだめだよ…
振り向いたつばさ君が言った。
どうして
こんな日に、偶然こっちを見るの?
私の顔はとても悲しい、さみしい顔なのに。
「お!あゆちゃん、また来年な!良いお年を!」
精一杯無理をして
精一杯の笑顔でうなづいた。