名前も知らない向こうのキミへ
_____ドクドクッ ドクドクッ
皆は昼食を食べていて、廊下には足音1つ聞こえない。
私の心臓の音だけが元気に鳴っている…
「“涼介”の好きな人…」
“涼介”…??
前までは、前までは飯窪って言ってたじゃない…
どうして、どうして…
私は心の中でパニック状態になった。
「誰だか…わかったとか??」
「井浦が言うには、愛莉菜だって…」
・・・・・何も返すことができなかった。
そんなの、そんなのわかってた。
呼び方変わった時点で仲良くなったのなんてわかるに決まってるジャン。
思わず涙をこぼしてしまった。
「郁瑠、泣いてるの??郁瑠だけには伝えたいと思って…
相談のってくれたし、なんか愛莉菜いけないことしたかな?」
「…おめでとぉ」
_____ダァァァァ
そんなのわかってた、わかってたんだよ?
だけど、だけどさぁ…
わけがわからなくなって、とにかくどこか遠くへ行きたかった。
行き場所もわからないまま外へ飛び出していった。