名前も知らない向こうのキミへ

_____キーンコーンカーンコーン

「あの…さ、今ちょっと時間ある?」

真っ赤な顔をした愛莉菜ちゃんは、
照れながら私の顔を覗き込む

「なんかあった??時間ならあるよ!」

私は何も知らない振りをしてたけれど…
なんとなくわかっていた、
“涼介君”の事だって事くらい。
だって、ずっと見てきてたんだもん…

話せないから、見ることしかできないから…

「よかったぁ!あのね…飯窪の事なんだけど…」

やっぱり!!…とは言えず私は黙って愛莉菜の言う事を聞いていた。

「す、す、好き…なんだ。」

「・・・・・え?」

わかっていた事なのに…
それなのに…
私はなぜかショックだった。

「でも、好きな子がいるんだって!!もう…私どううすればぁぁ」

“好きな子”私にはその言葉にしか耳に入ってこなかった。
そ、そかぁ涼介君には好きな子がいたんだね…

愛莉菜と一緒に泣きたくて泣きたくてしょうがなかった。

_____キーンコーンカーンコーン

何の言葉も返せずにとまどう私に、
いいタイミングでチャイムはなってくれた。

「な、なんかごめんね!!ありがとうっ」

愛莉菜は泣きながら教室へと走って行った。


・・・・・はぁ


私はタメ息だけついて教室へと歩いた。
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