線香花火【完結】
「よし、行くか!」親父はよっこらしょと言いながら椅子から立ち上がった。
「たかとちょっくら散歩してくるわ」親父は母さんに声をかけた。
「行くぞ」親父は内輪を持って歩き出した。
「夕焼けきれいだな」親父は空を見ながら俺にそう言ってくる。
「うん」親父とこうやって隣に並んで2人で歩くのは何年ぶりだろうか。
俺よりも少し背が高い親父。赤茶色のトラックを軽やかに走る親父がずっと憧れだった。
全然追い付けなくて、俺は高校のとき、バスケを選んだ。
中学の時は陸上をしていたけど、100m日本記録を持っている親父がでかすぎて俺は諦めた。