Tolie.
見覚えのない町並み。
”何処だろう”なんて
今更そんなことを考えても
私の中に答えがないことは
随分前から分かってたのに
知らない土地へ踏み込むたびに
同じことをぐるぐる考えていた。
会話のない車内には走行音と、
静かに洋楽が鳴り響いて
ヒリヒリ痛む足と妙な緊張感に
集中するしかなかった。
─────しばらくして、
小さな診療所の前で車は止まった。
「 ついたよ 」
ポン、と肩を叩かれて彼を見上げると
ゆっくり車から降りた彼は助手席の
ドアを開けて、私を抱き上げた。
「 もう抵抗はいいの? 」
からかうように言われて
目を逸らすと、可笑しそうに
笑う彼の笑い声が落ちてきた。