Tolie.




「 水いる? 」




部屋を出て行くときに
聞かれて、咄嗟に頷くと
”待ってろ”とだけ言って
男は部屋から出て行った。




私はまた寝かされて
目の前には天井が広がっていた。




あの人は、よく分からない。
あの人の放つ威圧感には
体中が怯えるのに
あの人がすることは”悪いこと”
ではなくて、むしろ動けない私の
世話をしてくれている。




────────キスは、されたけど。




あの人も、一輝も、
軽くキスをしてくる。
慣れていないせいか
その度に心臓は騒ぐし
顔は熱くなる。




”攫われた”のに
壊れ物のように大事に
扱われている気がして
私は混乱していた。






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