君だけのお嬢様に…


犬の乗った板をゆっくりと、
力強く川岸のほうへ押してみる。

川も穏やかで波はほとんどない。

この調子で、川岸で心配している
飼い主さんのもとへたどり着くだろう・・・


ああ、よかった

あれ。そういえば体に力がはいんないや

いつのまにか川が冷たいってコトも忘れてた

感覚がなくなっちゃった、てことかな?

気がつけばからだは仰向けで、
視界に広がっていた冬の空は
どんどん川の濁った青に飲み込まれる

あ、死んぢゃう・・・、


「-お--あ-んっ」

水の中で叫んだ言葉は
虚しく泡となって消える




    お父さん、お兄ちゃん、香夏子

        ごめんね・・・

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