憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
……多分。
正直言えば、千秋をベッドに運び込んでからの記憶が殆どない。
残されていた仕事は、なんと目の前にいらっしゃる尚様が全て片付けてくれたらしい。着けっ放しのパソコンには完璧なデータがしっかりと保存されていた。
「……本当、最低です。ごめんなさい……」
「仕事ならいいよ。いや、よくなんてないけど……、それよりも」
ますます、その瞳を冷たくする尚に首を傾げるあたしに、尚は心底信じられないという顔をした。
「な、なな……何?他にも何か失礼なことを……」
「もしかして、覚えてないの」
「ご、ごめん。実は、殆ど何も……」
ふう、と溜息を吐いた尚。
その直後。
バチンという音と共に、額に激痛が走った。
―デ、でこピンされた。
涙目になりながら、痛むそこを押さえる。
尚は、こちらを見もせずに、未だ気持ち良さそうに寝息を立てる千秋を小さく睨んだ。