憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「んう」
暢気に寝返りを打つ千秋に、いい加減腹が立ったのか、尚は千秋に近づき、ブランケットを剥ぎ取った。
暖を求めるように身体を丸める千秋を、ゆさゆさと揺する。
「千秋も、いつまで寝ている気?………、ほんと、うざいったらない」
末語に尚様の本音が添えられるのが聞こえて、ぞくりと背筋に悪寒が走る。
その時だった。
完全に寝ぼけた千秋が、ゆっくりと腕を持ち上げて、あろうことか近くに立っていた尚をしっかりと抱く。
「……千、秋!」
「わわ、ちょっと……、何やって!」
力いっぱい抱きしめられて苦しそうな尚と、抵抗されるにも関わらずいっこうにその手を離そうとしない千秋。
カ、カオス……。
誰と間違えているのか、千秋の寝顔はどこか嬉しそうに笑みを浮かべて。
「真知!」
そう、尚に呼ばれるまで、その場を動くことが出来なかった。