憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
尚の声にハッとしたあたしは、慌ててふたりの間に割って入ろうとするも、千秋は邪魔だと言わんばかりにあたしを遮る。段々とムカついてきて、最終的には真横から千秋の頬っぺたを思い切りビンタしてやった。

「痛ってええ!」

うん、効果は抜群だ。

「なにすんだ、、――って、ヒサ!!」

自分が抱きしめている尚を見て、なぜだか千秋は頬を赤くする。
ちょっと、あんた達……。

「男に抱かれる趣味はないんだけど」

「わ、悪ィ」

パッと尚を離して、酷く慌てた様子できょろきょろと視線を動かす。

「俺、どうして真知んちにいんの?」

とぼけた千秋の問に、必要以上に千秋から距離をとった尚が大きな溜息をついた。
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