憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

仕方なく、あたしは昨晩の居酒屋から今朝までの出来事を覚えている限り、千秋に話して聞かせた。

話が進むに連れて、みるみるうちに顔を青くする千秋。
そして、結果としては。

「すみませんでしたぁあああ」

と、やはり千秋もあたしと同じ展開になる訳で。二人揃って尚王子の許しを請うために必死に頭を下げるのだった。
なんにせよ、大好きな尚に見せた自身の失態はショックだったようで、未だ不機嫌な尚を前に大きく項垂れている。

「……どうしよう。ヒサに嫌われたら俺は死ぬ……」


とか言って、悲しそうな顔をする(……ていうか、あんたどんだけ尚のこと好きなんだよ)。

「ヒサ、ごめんな」

「別にいいよ」

「怒ってんだろ」

「怒ってないし」

「嘘だ!」

「しつこいな、嘘じゃないよ」

部分だけ聞けば、カップルの会話のように聞こえなくもないんですけど。
あれ、あたし置いてけぼりじゃん。

「見損なったろ」

ぽつりと、千秋が落ち込んだ声音で言った。
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