憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

捨てられた子犬のような瞳で、千秋は尚を見つめた。
面倒臭そうに、尚がゆっくりと千秋に視線を向け、首を傾げる。

「見損なうって?」

「……俺、それでいっつも女の子に振られちゃうから」

整った顔立ちと温厚な性格で、更には成績もよくスポーツだってそつなくこなす。佐伯千秋は、いつだっていわゆるクラスの人気者というポジションにいた。

そんな千秋は、先輩後輩問わず、色々な人間によくモテた。
言い寄られて、断ることの苦手な千秋がなんとなくオーケーを出しては、結局どこかで生じるズレを埋めることなく、千秋が振られる。

『千秋君は、思っていた人と違った。なんか物足りないんだよね』

最後に付き合った子には、そんなことを言われたらしい。
その度、千秋はあたしのもとへと泣きついてくるのだ。散々愚痴を吐いて、翌日にはケロッとしている。

いつだってそう。

『思っていたってなんだよなー。顔しかみてなかったくせしてさ。そんな子好きになれるかっての』

千秋は、悔しそうに言っていた。
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