憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
***
その後、尚は一度自宅へ戻るといってすぐに部屋を後にした。
残ったあたしと千秋は、母親が用意してくれた朝ごはんを食べながら、ゆっくりと珈琲を飲んでいた。
珈琲がカップ半分程になったところで、あたしはそっと口を開く。
「……びっくりした?」
「何が?」
千秋は、同じようにカップに口をつけながら、ゆっくりと視線だけをこちらに向ける。
「尚のことだよ。今までと違っていたでしょ」
「ああ、そのことか」
何が楽しいのか、くつくつと笑いながらコトリとローテーブルにカップを置く。そしてゆっくりと伸びをしながら、ソファにもたれた。薄茶色の瞳が嬉しそうに細まる。
「驚かない」
「まじで?」
「って言ったら、まあ少しは嘘になるけどさ。でも、真知は知ってたんだろー!ずるい!!」