憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ああ、疲れた」
「お疲れさまでございます、王子」
「何、王子って。……ていうか、真知はどれだけ失敗すれば気が済むわけ。そもそも何故、真知みたいのがQSにいるんだ」
「また、唐突に随分酷いこと言うね……」
だって、と尚は肩を竦めた。
皆がきっと思っていても言わないことを尚様はずばりと言ってくれる。
けれどあたしは、それにきちんと反論出来ないのが悔しい。
このQuolity Seasonという場所にいる人間達は皆揃いも揃って仕事が馬鹿みたいに出来る。まだ学生だというのに、予算管理から他大学との渉外まで、学業と両立しながら、多忙を極めるQSの仕事をこなす超人達の集まりなのだ。
「計数も間違いだらけだし、仕事が増えて疲れる」
「これでも、大分ミスが減ってきたんだけどなあ」
「真知はそそっかしいんだよ。裏にある意図を、どうしてきちんと見ようとしないんだか。ということで」
尚は、あたしが握り締めていた原付バイクの鍵を取り上げる。
「俺はビールが飲みたい」
「はいはい。奢らさせて頂きます!」