憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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だだっ広い大学の敷地を重い足取りで歩く。
どうせ使う施設なんて十分の一くらいなんだからもっと狭くていいのに、なんて、なんとも自分勝手な思考で舌打ちする。
不機嫌オーラを全開にしているあたしを、すれ違う人達が怪訝そうな瞳で見てくる。
失恋くらいでへこたれてたまるか、という無駄に発揮された意地で学校まで来てみたものの、どうにもハゲチャビン田丸の授業なんて受ける気にもなれず、溜息をつく。
授業開始の鐘が鳴れば、辺りにいた学生は皆、足早に各々の教室へと走って行った。
仕方なく、あたしは一つの部屋へと向かうことにした。
『Quolity Season』
通称、『QS』
それは、数百とある大学サークルではなく、公式的に学内イベント全般の運営を一手に引き受ける委員会の名前だ。
あたしと千秋は、大学1年の秋から所属をしている。去年の文化祭をしきっていたQSの先輩に憧れて。彼はもう卒業をしてしまったけれど、あたし達は特にサークルにも入っていないので、そのまま所属しているのだ。
広大な敷地の一番端、そこにある小さな建物が委員部屋として与えられていて、委員の皆はホームと呼んで、空き時間や昼休みにやってきては雑談したりテレビをみたりと、好き勝手にやっている。