憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
突然入ってきた尚に、三人はぎくりと身体を強張らした。
「ひ……、尚君!」
動揺したのか、声を強張らす純子。
それを然して気にする様子を見せない尚は、何かを探す素振りできょろきょろと室内を見渡している。
そして、ゆっくりと腰を落とし、彼女達に見えない角度で掌に持っていた鍵をチャリ、とわざとらしく鳴らしてみせた。
「ああ、よかった。やっぱりここにあった」
そう言って、にっこりと三人に笑みを浮かべて、鍵を揺らす。
その透き通った笑顔に、純子たちは顔を赤く染めている。
「……いつから、いたの?」
「え、何?」
聞こえないといった表情をして、ぱっと耳元に手をやる。
そして、いつの間に装着していたのか音楽プレーヤーのイヤホンを外して見せた。
「ごめん、よく聞こえなかった」
「あ、イヤホン……、ごめん。なんでもないの」