憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「彼女いるから」

あたしは、思わず口元を押さえていた。
こみ上げるこれはなに?

「知ってるよ、尚君の彼女って真知でしょ」

「そうだよ」


くすくすと笑う多恵と美香。
……む、むかつく!何がそんなに可笑しいのよ!!

「いいじゃん、固いこと言わなくたって。ご飯くらい一緒に行ってきなって!それくらいなら真知だって怒らないでしょ」

怖いもの知らずの美香が、ここぞとばかりに尚の腕に絡みつく。
あわわ、好青年バージョンで周囲を魅了する今の状態だから許されるものの、心の中で絶対にイラついてるに違いない。嫌だ、絶対捌け口はあたしじゃん!

なんて考えていた時だった。
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