憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「君、誰?」

と、人前では完璧に封印していたはずの冷たい声音。
尚に問われたことが意外だったのか、美香は驚いたように目を丸くして尚を見上げている。ミスキャンである純子といつも一緒にいるふたりなので、彼女達は無条件に有名だ。まさか、尚に知られていないとは思わなかったのだろう。

「……えっ、」

「あのね、尚君、この子達は私の親友で」

「別に興味ないし、気安く触らないでくれる」

怜悧な瞳を細めて、酷く鬱陶しそうに、美香を腕から振り払った。

―…え、ちょ、ちょっと尚!あんた一体何を言い出すつもり!?

「ひ……、尚君……?」

物腰柔らかで、誰にでも優しい"岡崎尚"から打って変わっての態度に、純子は同様を隠せない。美香と多恵も、若干青ざめている。
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