憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
激高する純子に、慌てて止めに入る美香と多恵。
それでも、掴みかかる勢いで純子は尚を睨みつけている。
身震いしてしまうような視線もさらりと受け流す。顔をあげたとき、廊下の窓から中を覗いていたあたしと一瞬だけ目が合ったけど、すぐに反らされてしまった。
そもそもあたしがあそこで失態をしなければ起こらなかった事態だけれど。
それでも、尚が完璧に周囲を欺いていた演技をとき、本性をばらしてまでわざとらしく挑発をするなんて信じられなかった。
「私が、こういうことしてるって皆に言うつもり?……別に構わないけど、新人のあなたの言うことなんて、一体誰が信じるのかしら」
「さあね。信じないんじゃないの?椎名さんは随分と人望が厚いみたいだし」
尚の言葉に、純子は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
「でもね、」