憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「お、美味しい……」
「ふふ、よかった。この茶葉はお気に入りなの」
思わず言葉を漏らしたあたしに、彼女は嬉しそうに笑った。
そういえば、いつだかホームで尚が淹れてくれた紅茶も最高に美味しかったっけ。そんなことを思い出した。
「あの、今日はあたしまで突然来てしまってすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ。私は、尚さんのおうちで働かせていただいている美華(ミハナ)と申します。このお屋敷の管理を任されているんです」
驚いて尚を見るものの、涼しげな顔で紅茶を口にするだけで、一切会話に加わろうとはしない。
最初の様子から、なんとなく尚と美華さんに血の繋がりがないことは分かったけれど。ということは、他にも尚の家族がこの洋館に住んでいるということなのだろうか。