憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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美華さん特製のポトフをお腹いっぱい頂いたあと、あたしは尚にひとつのゲストルームへと案内された。
薄暗い廊下を、ふたりでひたひたと歩く。
7つの扉をとおりこして、階段をのぼり、最奥のドアを開ければ、そこには天蓋つきのベッドがある大きな部屋があった。
「今日は、ここ使って」
「う、うん、ありがと。……て、ちょっと!」
「ああ。風呂は今から用意するから、また後で教えるよ」
「そうじゃなくて!!」
思わず声をあげる。
「なに」
「なに、じゃないよ!人をいきなりこんな場所まで連れてきておいて。一体どういうつもり?」
「……」
尚は、どこか躊躇した様子で、そのまま聞こえなかった振りして部屋から立ち退こうとする。
今日こそ逃すまいと、あたしは反射的に尚の腕を掴んでいた。