憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
パッと、煙草を取り上げられて傍にあった灰皿に押し付けられる。
「んなぁ!?ちょっと……」
バッと振り返って、抗議をしようとソイツの顔を睨む。
「……っ」
委員会の人間じゃない。一度も見たことのない男が無表情で立っていた。
「あんた、ここの委員会の人間?」
まるで黒曜石のような、どこまでも黒い瞳があたしを捉える。
「そ……、そうだけど……」
艶のある漆黒の髪が風で、ふわりとなびいた。
思わず、じっと見つめてしまう。
初対面の人間の煙草を取り上げ、しかもアンタ呼ばわりするという無礼を除いたとしても、目の前の男は、どこまでも綺麗だった。ここまで目を惹き付けるような容姿の人間もなかなか珍しいなと思う。
「あなたは、この学校の人……?」
おずおずと聞いたあたしに、この男は小さく口角を吊り上げた。