憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
尚の瞳が、僅かに揺らいだ気がした。
不思議そうに小さく眉を寄せてそっと首を傾げる。
「この状況で、よくそんなこと言ってられるね」
「じゃあ、本気だとでも言いたいわけ?……だ、抱きたいんなら抱けば!そんなことしたら一生許さないけど!」
思わず声を上げた。
尚は暫らく黙ってあたしを見つめた後、やれやれといった様子で溜息を吐いた。なんであんたがそんな反応するのよ。
「馬鹿馬鹿しい」
「ちょっと、どういう意味よそれ!」
あたしを拘束していた手をどけて、ゆっくりとあたしの上からどいた。いつものように、ほんの少しの距離をとる。
「あんたを見てると、時々凄く苛々する」
「突拍子もなく酷いこと言う!……ていうか、大丈夫?もしかして熱でもあるの。顔が……」
掌を当てようとすれば、尚が嫌そうにそれを腕で防いだ。