憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
濡れた髪の毛をタオルで拭いながら、薄暗い廊下を道順を確かめながらゆっくりと歩く。
リヴィングの扉を二度ノックして、ゆっくりと押す。
カップを手に、テレビを見ていた美華さんがこちらを振り返り、にこりとその顔に笑みを浮かべた。
「あの、お先にお風呂お借りしました」
「お湯加減は大丈夫だったかしら?」
「はい」
「そう、ならよかった。そうだ、よければ少しお茶に付き合ってくださらない?こんなところに住んでるとなかなか話し相手も見つからなくて」
こくりと頷けば、美華さんは「よかった」と笑い、ローテーブルにあたしの分のカップを用意して、お菓子も一緒に勧めてくれた。