憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……真知さん」
呼ばれて顔をあげれば、美華さんは何か言いたげな様子だった。
「なんですか?」
「尚さんは、あなたに優しくしているかしら」
「ええっ!」
思わず声を上げてしまった。
とてもじゃないが、つい先程襲われかけました、なんて言えるわけもなく。あたしはしどろもどろになりながら金魚みたいに口をパクパクさせる。
動揺が隠し切れない
「ふふ、よかった」
「……はい?」
な、何が"よかった"なんですか。全然良くないですよ!!
尚のこれまでの悪態が走馬灯のように頭を駆け巡る。
『パン買ってきて。今から10秒以内』
『なんで、真知ってそう馬鹿なのかな』
『真知には、関係ない』
思わず頭を抱えたあたしに、美華さんはついに声を上げて笑い始めてしまった。