憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
目尻に浮かぶ涙を拭いながら、美華さんがあたしをそっと見つめる。
細められた目尻には、確かに感じるもの。
「嫌わないであげてくださいね」
のんびりと、そんなことを言った。
彼女にとっては、尚は本当に大切な存在なのだと思った。彼女の言葉や表情、その端々に愛情が浮かぶ。
血の繋がりなど関係ない。
「あの、他のご家族は今ここにいるんですか?……この場所は、尚の実家、なんですよね」
「いいえ。ここには私一人だけですよ。だから、実家と、そう呼ぶに相応しい環境を、尚さんに作って差し上げられていたら良いのだけれど」
「それって、どういう」
美華さんは、困ったような顔で微笑んだ。