憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ふふふ。だから、尚さんは真知さんを選んだのかもしれませんね」
思わず目を見開いた。
柔らかな美華さんの声音が、静かに響く。罪悪感で、胸が痛い。
どう思うのかな。
選ばれたんじゃない。あたしは、ただ彼女の振りをして欲しいと言われただけ。尚は決してあたしに特別な感情を持っているわけじゃないのに。
彼女なんて役は、毎日のように押し寄せる尚のファンを、遠ざける為の謂わば殺虫剤代わりなんじゃないかとすら思っているくらいだ。
胸が痛い。
これはなんだろう。千秋に失恋してしまった時や、罪悪感に苛まれる時の感覚とも違う。
息が、苦しい。