憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「けど、このまま黙って千秋が騙されてるところなんて見たくない…」

思わずそう言った。
あの馬鹿で優柔で、天然タラシの千秋がようやく本気で恋をした。

「真知はそれでいいんだ」

「え?なにがよ」

「純子に遊ばれて傷心した千秋を、真知が優しく慰めてあげれば好感度あがるんじゃないの」

淡々とした口調で尚が言う。
呆然と尚を見上げると、彼はクスッと笑った。

「真知の恋愛シナリオ的にはどう?」

「……馬鹿にしないで。それじゃ、純子と一緒じゃない」

自分の声に力が篭る。
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