憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「酷い顔だね」

顔がカーッと赤くなるのを自覚する。

なんだこの男!最低!!
必死にサングラスを取り返して、顔を隠す。

「なに、男にでも振られたの。ここの窓から見てたけど、来る途中もずっと百面相してて面白かった」

「うっさい、黙れ!不法侵入者!」

「ねえ、あんたの名前……」

「……誰が教えるもんですかっ!!!」


声を上げて、男の手からサングラスを奪い取った。
男は、不躾にあたしのことをじろじろと見ているのに小さく舌打ちをする。なんて人の気持ちを逆撫でするのが上手なんだろう。

思いきり睨みあげて、あたしは彼に背を向けて部屋を出た。
失恋したかと思えば最低男との遭遇、踏んだり蹴ったりとはこのことだ。
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