憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
恋を成功させるのに、時に打算は必要。
それが得意な人だっているし、逆に苦手な人だっている。そして、あたしはたまたま後者の人間ってだけだ。
不器用で、天邪鬼で、恋愛資質はゼロ…いや、マイナスかもしれない。
それでも。
「あたしは……、あんたがいうように単純だから。千秋が傷ついて欲しくないって思う。ずっと傍にいたのに守れないなら一緒にいる意味なんてない」
「……」
「どうせ、また馬鹿だって言うんでしょ」
ああ、あたしはこの恋を、本気で叶えようとしているのかな。
ゆっくりと尚とあたしの視線が交わる。
「うん、そうだね。もっと、うまく立ち回ればいいのにって、いつも思ってるのに……」
尚の掌が、そっとあたしの髪をすべる。
僅かに感じる彼の温度が、首筋に触れた。