憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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伝統ある誠東学園の正式な委員会であるQuality Seasonに入会するとき、千秋とあたしはそれこそ震えが止まらないくらい緊張していた。学園の有名人である更夜先輩に連れられて、ホームの扉を押したのだ。
秋の穏やかな午後。
随分と重苦しく感じた扉の向こうで、窓の外を眺めていた彼女。それが純子だった。
「純子、おまえ一人か?」
更夜先輩にそう声を掛けられて、驚いた様子で振り返ったその姿にあたし達は思わず息を呑んでいた。
まるでフランス映画から出てきた女の子みたいだ。
小さな顔に、整った目鼻立ち。すらりとのびた手足は白磁の色をしていた。
「……千秋」
あたしの呼びかけなんて、まるで耳に入っていないみたいだった。
思えば、このとき。
千秋は一瞬で恋に落ちていたのだ。