憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「私、椎名純子。1年よ」

握手を求める、その小さな掌が怖かった。

綻んだ表情で手を握り返す千秋を、あたしはなんとも言えない気持ちで見つめていた。ずっと大切にしていたものを、あっという間に攫われてしまう。それは確信めいた恐怖だった。

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