憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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ぼんやりと過去の出来事に頭を巡らせていると、いつの間にかあの時と同じ扉を目の前にしていた。
「さあ、仕事仕事!」
そんな言葉で誤魔化して、ホームの扉を押した。
「……ぎゃっ!!」
室内に入って、あたしは思わず声をあげた。
だってそこには。
「なあに?真知ったら、変な声出して」
「じゅ、純子!」
自分の間の悪さに心底腹が立った。パソコンでパチパチと何かを入力していたのは、思いっきり渦中の人物である純子だったのだ。どもるあたしに、小さく首を傾げた。
「真知ったら、田丸先生の授業サボったでしょう。私、今日先生から直接聞かれたのよ?真知はどうしたって」