憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
どきどきと心臓がうるさい。
何を言い出すのだろうと、不安が込み上げてきて吐きそうになる。純子があたしにお願いだなんて。
「あたし、千秋君が好きなの」
シンと静まり返ったホームに、純子の声が響いた。
固まったまま、あたしは動くことが出来なかった。頭の中がぐるぐるとまわって、足元が覚束ない。気を抜けば、芯から崩れ落ちてしまいそうだ。
純子は、知ってる。
信じるなんて嘘。純子は、あたしが尚から彼女の本性、企み、全部聞いたと思ってるんだ。
あたしへ仕掛けてきている。
「真知と千秋君は幼馴染なのよね」
「……そうだよ」
「千秋君て、好きな人いるのかなあ。あたしね、本当はずっと真知に相談したかったんだ」