憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「どうして何も言ってくれないの?」

悲しそうに眉を潜める純子。
今、ここに事情を全く知らない人間が入ってきたとしたら、間違いなくあたしが悪モノに見られるんだろう。

何を言えってのよ。

(千秋は、あんたのことが好きだよ)

そんなこと、もうとっくに知っているくせに。研究室で、3人ではしゃいでたじゃないの。
改めてあたしの口から言わせるなんて、悪趣味にも程がある。

「言わないんじゃなくて、もしかして言えないの?」

「……!」

「真知、千秋君の事ずっと好きだったもんね」

「なんで」

純子が、ゆっくりと笑みを浮かべた。
気がつけば、あたしは純子の張った罠にまんまと引っかかっていた。

「図星でしょう。気づかない訳ないじゃない。バレバレだよ、真知のことなんて。だから今まで相談出来なかったの」

「純子(この大嘘つき!)」

「でも、もう良いでしょう?真知、尚君と付き合ってるじゃない。協力してよ」

一歩、あたしへと近づいた。
反対に、あたしは純子から一歩遠のく。
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