憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「それで、あなたの幼馴染を守ってるつもり?偽善もいいところね。そういうのくだらなくて嫌い。凄くムカつく」

「……純子」

「尚君から聞いたんじゃないかとは思ってた。やっぱりそういうこと」

純子はソファに深く腰掛けて、見せ付けるかのようにその細くて白い、カモシカのような足を悠然と組み替えた。

「真知に、何が出来るのかな」

「千秋には、近づけさせない」

「あら、私が近づかなくても、千秋君の方からやってくるのだけど」

思わず、唇を噛む。
あたしのことなど、お見通しだとクスクスと笑った。

「真知、あなた。私に協力しなかったこと後悔するわよ。絶対」

「そんなこと、ありえない」

「いいえ、するわ。誓ってもいいわ」

長い睫毛に縁取られた純子の目が、ゆっくりと細められる。それは、魔性。魅せられてしまう妖しい魅力。

「千秋君も、更夜先輩も、あなたの数少ない友達も誰も真知の味方にはならない。それでも、私に歯向かうの。千秋君を守る為に?」

「……」

「あなたは無力よ」
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