憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
言い返そうと、口を開きかけたときだった。
コンコン、とホームの扉がノックされる音。あたし達は一瞬びくりと固まって、そっと入口を見る。
返答を待たずに、ゆっくりと扉が開いた。
「あ、なんだ居たのか。返事くらいしてくれよなあ」
「ち、千秋」
「あ!真知!おまえ、堂々と朝帰りしやがって!連絡もないからおばさん心配してたぞ」
入ってきたのは、千秋だった。
純子をチラリと見れば、この一瞬に学園のマドンナの仮面をサッと被りいつもの調子で笑みを浮かべている。
「ヒサはいねえんだ」
「うん、4限出てるから」
「そっか。CD返したかったんだけど……、って、どした?真知。なんか元気ない?」
「そ、そんなことないよ」