憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
そんなツチノコでも見るような目で見ないでください……。
更夜先輩にまでそんな目で見られたら、今度こそあたしは灰になってあの桜の花びらと一緒に散ってしまいます。
「尚は一年の春、お前達が入る前に所属していたんだ」
「……そ、そうなんですか……」
更夜先輩は、特に何も気にしていないようで、淡々とそう言った。
「でも、あたし入って半年経ちますけど、尚なんて男見た事なかったですよ」
「元々は特待で入学していたんだが、家庭の事情で入ってすぐに一年間アメリカの姉妹校へ編入していたからな。本来であれば交換留学は二年次以降なんだけどな。大学も手放したくないくらいには優秀な学生ってことなんだろう」
ふうん、その"家庭の事情"とやらにはまったく興味なんてないのだけれど、それを聞いて酷く納得した。
「ごちそうさま」
「もう行くんですか?」
「今日は4限からだからな。真知は、」
「あぁ……、もう授業はないので帰ります」
あたし、何しに来たんだろう。
尚とかいう謎の男と喧嘩して、Aランチ定食食べて憧れの先輩に好奇の目で見られただけ。
またな、そう言って先輩は教室へと向かって行った。