憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「真知、俺に頼っているようじゃ、純子には太刀打ち出来ないよ」

「なんで、尚。あんたは、千秋が心配じゃないの？」

ショックだった。
この最悪な事態で、少なからずあたしは、尚の協力を期待していた。そんなあたしの様子にすぐに気づいた尚は、馬鹿にしたように笑った。

「真知の覚悟なんて、そんなモノか」

「何よ。あたしだって、」

「どうせ、いつも千秋の後ろに隠れてばかりで。あんたは今まで一度だって前に出た事ないんだろ。……怖い？」

淡々と紡がれる言葉は、あたしの醜い心を暴く。
押さえきれないくらいの怒りがこみ上げているというのに、ひとつだって返す言葉が見つからなくて。

ただただ唇を噛み締めることしか出来なかった。尚が呆れた視線をあたしへ送っていることは、見なくても分かった。

呆れた、というよりも失望に近いんだろう。

（だって、今あたし自身ががあたしに失望しているのだから）