憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「……あたし、すごく怖いんだ、尚」

「純子が?それとも、孤立すること?」

「違う。千秋に……、嫌われるのが」

いつもいつも、いつもいつもいつも、あたしは何かを決めることが苦手だった。自分が決めて動いた事で、何かが変わってしまうことが怖くてしょうがなかった。

誰かが決めてくれるんじゃないか。
それで何かが悪い方向へいってしまったとしても、それは自分のせいじゃないと言い訳をつけていた。

そんな自分が大嫌いだったのに、どうしても変わる事が出来なかった。
気づかない振りして、顔を背けて、ここまで来てしまった。

千秋が好き、本当に大好き。
けれどこの思いを伝えられなかった臆病な自分は、大嫌いだ。
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