憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

20年間、ずっと気づかない振りをして、見ない振りをして逃げていたことを、なんで尚なんかに問い詰められてぶっちゃけてるんだろう。

「椎名純子には、逃げずに向き合ったんだろ」

「……うん」

「一番向き合いたい人間に向き合わないでどうするのさ」

「……、うん」

さっきまであたしの心臓を突き刺していた氷のような尚の言葉が、じわりと溶けて優しくあたしの心を包み込む。

「ありがとう」

そう小さく呟いた。
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