憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


相談がある。

大学からの帰り道、それはそれは真剣な顔をした、幼馴染兼親友である佐伯千秋に呼び止められ、あたしは今行きつけの店で2杯目のビールに口をつけている。

「……好きなんだ」

「え、ちょ……」

一番端の席で、千秋が苦しいものを吐き出すようにそう言った。既に、あたしの倍のペースで飲んでいる千秋の顔はほんのり赤味を帯びている。

まさか、告白なんて。
心臓がドキドキと大きく音を立てている。

言わなきゃ、あたしも。ずっと、千秋と出会った15年前からずっと、千秋だけが好きだったって伝えなくちゃ。
震えをなんとか抑えて、そっと千秋の手を握る。きゅっと力を込めれば、とろんとした瞳をあたしに向けた。

「あの、……あたしも、好……」

「本気で好きなんだよ……、椎名純子が」

「はあ?」

思わず、目を見開いてしまう。コイツ今なんていった?
あの、あたしの名前は黒崎真知なんですけど!
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