憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

勢いのままに、純子の腕を引く。

「きゃ!」という小さな悲鳴を上げて、わざとらしく体勢を崩して床に倒れた。その瞬間、小さく口元に笑みを浮かべる純子の顔が見えて、ぞくりと背筋が冷える。

駄目だ、あたし。何をしてるの?
これじゃまた、純子のシナリオ通りに踊らされるだけ。

「おい、真知……っ!!」

千秋が、怒気を含んだ声音であたしの名前を叫んだ。
違う、こんなつもりじゃなかったのに。

説明を。

「千秋、お願い、聞いて」

「何がしたいんだよ、おまえ!」

涙を浮かべてみせる純子を庇い起こしながら、あたしを睨む。
泣きたいのはこっちだよ。

「駄目なの、純子は」

「は?」
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