憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
軽蔑を超えて、千秋の瞳には悲しみの色が灯る。その瞳に見つめられたあたしは、上手に息が吸えなかった。
幼い頃に千秋と出会って、恋して、それからずっと一緒。千秋の背中を追いかけてきた。
人付き合いが苦手で、勉強も運動も人一倍努力が必要で、そんな劣等生なあたしをいつも最後まで見捨てないでいてくれたのは千秋だけだった。
どんなに馬鹿やっても、失敗ばかりでも、いつも"大丈夫、もう少し"と言って笑っていた。
―そんな目で、あたしを見たことなんてなかったのに。
「酷いよ、真知」
ついには大粒の涙を零し始めた純子を、千秋がぎゅっと抱きしめる。
「ごめん」そう、千秋が純子に小さく呟くのが聞こえた。
「……真知も謝れよ」
「なんで。そんな必要ない」
「お前な!!……どうしたっていうんだよ、いきなり!」
「お願い、話を聞いて。ふたりで、ちゃんと話したいの!!」