憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

千秋は一瞬戸惑いを見せたものの、不安気な表情で千秋を見上げる純子を見て小さく首を横に振った。

「まずは純子にちゃんと謝れよ」

「千秋……」

「真知、変だよお前。てっきり、喜んでくれるとばかり思ってたのに」

喜べるわけないじゃん。
あたし、ずっとあんたのこと好きだったのに。せめて、純子があんたの好きな通りの純子だったら、喜ぶ振りくらい出来たと思うけれど。

見えない角度で、純子が意地悪く笑う。
それに気づいたあたしは、ぎゅっと拳を握り締めていた。

「謝らない。そんな必要、ないもの」

千秋は、大きく目を見開いた。
純子を睨む。怯えた演技で、千秋にしがみつく彼女は相変わらずとても可愛くみえた。

「こんなことする真知なんて、嫌いだ」
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