憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
……そっか。
けれどあたしは、ほんの少しだけ自分を好きになれたよ。
響く千秋の声は、あたしを冷静にさせた。
これ以上、"信じて欲しい"なんて都合のいい言葉は言えなかった。
けれど。
「純子、あたしはもう、絶対に逃げないから」
「真知」
千秋が裏切られたという顔をして、あたしの名前を呼んだ。
『嫌いだ』
その言葉が、胸に突き刺さったまま痛むけど、気にしない素振りでふたりに背を向けた。
「待てよ、」
さっきまで純子の肩を抱いていた手が、あたしの腕を引いた。
それを、ぱしりと弾き落とす。
涙が零れないように、耐えるのに必死だった。