憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
何も言わず、驚いた顔をする千秋から視線を外して、そのままホームを後にした。
足早に、ただ何かを振り切る様に、必死に足を動かした。
外は、今朝の天気予報通りに雨が降っていた。
その中を傘もささずに走る。
頬を流れ落ちる水滴は、既に雨か涙かわからなくなっていた。
「……ぅあっ」
何かにつまずいて、道路に倒れこんだ。
服も、顔も、髪の毛も、泥だらけだ。
惨めで、哀しくて、無力な自分が情けなくて、でも何に縋ることも出来ずに声を押し殺して泣いた。