憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「紗雪先輩」
「なによ」
無表情で雑誌を捲っていた先輩が、顔を上げた。
「更夜先輩って結構鈍いから、ツンデレもいい加減にしないと気づいてくれないと思いますよ」
「……なんで!私が更夜相手にデレデレしなきゃなんないのよ!!」
真っ赤になって怒鳴り散らす紗雪先輩は、素直じゃないけどとても可愛かった。
恋、してるんだな。そんな風に改めて思って、ずきんと心臓が痛んだ。自然と自分の顔が曇るのがわかる。
「真知」
「なんですか?」
咄嗟に笑顔を作ろうと思ったのに、うまくいかなかった。
いつも、あたしなんかよりもっと高い場所にいる紗雪先輩との距離が近い。