憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


『チャッチャラー!マチはレベルアップした。HPが6あがった、MPが3あがった…』

テレビから、レベルアップを祝福する音楽が流れる。ベタなストーリーだけど、なかなか面白いんだな、これがまた。ちなみにあたしは主人公に自分の名前をつけるタイプだ。だから今、あたしは勇者マチ。
世界を救っている最中なのだ。

「……ぷはぁ」

ビール、最高。
やっぱり、一日の終わりを締めくくるお酒って格別。

結局、あの後すぐに家へと帰宅した。
友人には、誰もあたしが千秋を好きだったなんて伝えていないし、むしろ好きな子ほど虐めたいなんて勢いで、文句ばかり言っていた。

だから相談なんて出来るはずもなく。
靄々とした気持ちは、今日の腹立たしい出来事と共にアルコールで流し去ることにした。飲もう。ひとりで飲んで潰れて、忘れるんだ。

コンコン。
ち、誰だよ……。あたしの楽しい晩餐を邪魔する輩は。

なんて思ってはみたものの、この時間に家にいるのはお母さんだけだ。珍しい、普段はノックなんてせずに勝手に入ってくるくせに。
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