憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「あたしを誰だと思ってんのよ。あんなの、見てりゃすぐに分かるっての。千秋君てば、ずーっと純子のこと目で追ってたし。けどさ、真知。あんたは、」

「……っ」

「あんたはずっと、千秋君のこと見ていたよね」

紗雪先輩の声に、身体がぎくりと固まる。

先輩は、QSの副委員長で委員長の更夜先輩の優秀な右腕だ。その仕事振りは繊細でいて正確。QSメンバー内をうまく調整して、仕事を割り振るのも先輩の大事な仕事だ。

だからこそ、誰よりそういった変化に敏感なのだ。

「間違ってた?」

泣きそうになるのを必死に堪える。
何も、間違ってない。

あたしは、今も。
今も変わらず千秋のことが……。
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